富士五湖から甲府盆地を抜けて南アルプスの登山口へ——この縦の一本を2泊3日で組むなら、宿は「湖畔で1泊、盆地の温泉で1泊」に絞るのが最も無理がない。欧米からのリピーターが日本を2〜3週間かけて周遊するとき、東京と京都のあいだに挟み込む「自然+活動+異文化体験」の区間として、山梨のこの縦軸は年々存在感を増している。山小屋に泊まる縦走ではなく、翌日のトレッキング・果樹園・酒蔵へ確実に送り出してくれる中規模ホテルを起点に据える。本稿は、公開レビューデータを集計したうえで編集部が選んだ2軒と、3日目朝の南アルプス方面への抜け方をまとめた行程記事である。

ホテル エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1泊目 富士レークホテル 富士河口湖町・河口湖畔 91 74 ¥42–¥51k 1932年創業、河口湖駅徒歩10分。5言語対応とバリアフリー設計
2泊目 常磐ホテル 甲府市・湯村温泉 93 50 ¥46–¥52k 1929年創業、自家源泉と日本庭園。東館12室が南アルプス側
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

Day 1|東京から河口湖へ、湖畔に降りる

新宿から高速バスでおよそ1時間45分。列車なら大月で富士急行線に乗り継いで2時間強。どちらでも昼過ぎには湖の南岸に立てます。初日は移動そのものを消費せず、チェックイン後に湖畔を歩き、翌朝のトレイルに備えて早く休むのが、この行程では正解と言えます。

1泊目. 富士レークホテル — 富士河口湖町・河口湖畔

1932年創業、河口湖駅から徒歩10分。翌朝のトレイルに送り出す起点として、編集部が真っ先に置きたい一軒。

HotelPicks Score: 91 / 100  74室、湖畔の温泉リゾートホテル。

目安価格 ¥42,000–¥51,000 / 泊 (2名1室・通常期)


富士レークホテル — 富士河口湖町・河口湖畔 · 露天風呂付き特別室から望む富士山、1932年創業の湖畔リゾート
PHOTO: 富士レークホテル — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

アドベンチャーの起点に求められるのは、眺望よりもまず「翌朝の確実さ」です。この宿は河口湖駅から徒歩10分の位置にあり、駅からの無料送迎に加えて、朝は8時15分から30分間隔で駅への便が出る。装備を抱えた旅程でも、始発に近い時間帯のバスに乗り継げます。加えて創業者が米国でホスピタリティを学んだ医師であったという成り立ちが、現在のバリアフリー・ユニバーサルデザイン方針に引き継がれており、体力差のある同行者を含む一行でも組みやすい。全客室と会議室のWi-Fi、昇降式デスクの貸出まで整い、長期周遊の途中で数日仕事を挟む旅程にも耐えます。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、この宿への評価は「立地の確実さ」と「食の選択肢の広さ」に集中する傾向が読み取れます。ビュッフェとフランス料理、和食ダイニングを併走させる構成は、連泊時に食が単調にならない点で支持されている。一方で、館が東西に分かれチェックイン時刻も異なるため、棟の違いを理解しないまま予約した層からは評価が割れる。海外からの利用者の比率が高いエリアにあって、多言語での案内が行き届いている点は安定して高く評価される項目です。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    公共交通だけで山梨を縦に抜けたい旅程、体力差のある同行者を含むグループ、周遊の途中で1〜2日仕事を挟む長期滞在、初日から食事の選択肢を確保したい人
  • 向かない:
    静寂だけを求める滞在(駅至近で日中の人通りがある)、犬などを帯同する旅(ペット同伴不可)、棟ごとの違いを事前に確認せず予約したい人

具体情報

  • 最寄り駅: 富士急行線・河口湖駅から徒歩 10 分(駅からの無料送迎あり/ホテル発の駅便は毎朝 8:15 より 30 分間隔)
  • 客室数: 74室(特別室・露天風呂付、ビューバス客室、バリアフリーコーナールームなど)
  • チェックイン: 東館 14:00〜 / アウト 〜11:00、西館 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 食事: ディナービュッフェ、和食ダイニング「赤富士」、フランス料理「PREMIER」、朝食ビュッフェ、自家製ベーカリー「Le pain de Daniel」
  • 創業: 1932年(昭和7年)
  • 駐車場: 無料50台(予約不要)
  • 言語対応: 公式サイトは英語・簡体字・繁体字・タイ語・韓国語に対応
  • ペット: 同伴不可


Day 2|湖から盆地へ、山を降りて果樹と酒に触れる

2日目の午前は湖畔でひと歩き。三湖台や紅葉台のような半日で往復できるトレイルを入れてから、午後に北へ移動します。河口湖から甲府へは、車でおよそ1時間、公共交通なら路線バスの直通便でおおむね1時間半から2時間。御坂の峠を越えた瞬間に、視界が桃とぶどうの段丘に切り替わる——この落差が、この行程の見どころです。笛吹・勝沼の果樹園やワイナリー、甲府市内の造り酒屋を挟んでから宿に入ると、一日の密度がちょうど良くなります。

2泊目. 常磐ホテル — 甲府市・湯村温泉

1929年創業、自家源泉と松を基調とした日本庭園。東館の全12室が南アルプスを向く、盆地側の起点。

HotelPicks Score: 93 / 100  50室、日本庭園を抱える温泉ホテル。

目安価格 ¥46,000–¥52,000 / 泊 (2名1室・通常期)


常磐ホテル — 甲府・湯村温泉 · 一面のガラス越しに日本庭園を望むロビー、1929年創業
PHOTO: 常磐ホテル — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

この宿を2泊目に置く理由は、地理と時間の両方にあります。甲府駅から車で10分ほどの湯村温泉にあり、翌朝そのまま南アルプス方面のバスに接続できる。加えて、東館の全12室が日本庭園と南アルプスの側を向いて配置されており、3日目に向かう稜線を前夜のうちに見ておける。温泉は借り物ではなく、1934年に創業者自身が掘り当てた自家源泉。ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉を、客室露天風呂ではかけ流しで用いています。歩いた脚をほどく夜として、条件が揃っていると言えます。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価はまず庭園と湯に向かい、次いで料理と接遇に及びます。松を基調とした庭を「客室から見る対象」ではなく「歩く対象」として設計している点が、滞在時間の長い層に効いている。海外からの利用者では、格式ある和の様式と、堅苦しくない運営のバランスへの評価が安定して高い。一方で、増改築を重ねた館ゆえに棟によって設えの世代差があり、新しさを最優先する層とは相性が分かれる傾向も見て取れます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    翌朝そのまま南アルプス方面へ抜けたい旅程、日本庭園と温泉を一晩で両方たどりたい人、和の様式を体験したい海外からのリピーター、車で山梨を巡る旅(無料200台)
  • 向かない:
    最新設備の統一感を最優先する人(棟により設えの世代差あり)、湖や海の眺望を宿に求める旅、駅直結の利便を第一条件にする移動中心の旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR甲府駅から車で約 10 分(湯村温泉)
  • 客室数: 50室(離れ・東館・西館。東館は全12室が日本庭園と南アルプス側)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 温泉: 信玄の湯・湯村温泉。1934年掘削の自家源泉、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。客室露天風呂はかけ流し、大浴場は加温循環
  • 庭園: 開園 11:00〜15:00(年中無休)。入園料 1,200円(宿泊者は無料)
  • 創業: 1929年(昭和4年)
  • 駐車場: 屋外200台・無料
  • 言語対応: 公式サイトは英語・簡体字・繁体字・韓国語に対応


Day 3|朝、甲府から南アルプスの入口へ

3日目は宿を出る時刻が全てを決めます。甲府駅から芦安までは路線バスでおよそ1時間。芦安で乗合バスまたは乗合タクシーに乗り継ぐと、北岳の登山口である広河原に入れます。夜叉神峠の登山口も同じ路線上にあり、稜線に出て白根三山を正面から見るだけなら、半日で往復できる行程が組める。

ただし林道は通年で開いているわけではありません。マイカー規制が敷かれ、開通は例年6月下旬から11月上旬にかけて。運行日程と便数は毎年更新されるため、この行程を組むなら南アルプス市の観光情報で当年の運行を必ず確認したい。逆に言えば、6月下旬から7月上旬は、山小屋が開き、林道が通り、盆地では桃が出回る——三つの条件が同時に成立する短い窓です。編集部がこの時期を推すのは、そのためです。

山に入らない選択も用意しておくと、行程は強くなります。芦安まで足を延ばして南アルプス山岳館で山の成り立ちに触れ、南アルプス市の果樹園でさくらんぼや桃をもいでから、甲府に戻って夕方の特急で新宿へ。天候が崩れた日の代替案として、この形も十分に成立します。

よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推すのは6月下旬から7月上旬です。南アルプスの林道が例年この時期に開通し、山小屋も動き出す一方、盆地ではさくらんぼから桃へと果樹の端境が重なります。梅雨の影響は避けられませんが、その分だけ混雑は秋より穏やかです。紅葉と収穫を優先するなら10月中旬から下旬。冬季は林道が閉じるため、3日目の行程は組み替えが必要になります。

Q. 予約のタイミングは?

A. 湖畔・盆地とも、夏休みと紅葉期は2〜3か月前から週末が埋まり始めます。特に富士山の展望が期待できる客室タイプは指定が集中しやすく、平日と週末で確保のしやすさが明確に分かれる。逆に6月の平日は比較的取りやすく、価格も通常期の水準に収まりやすい時期です。3日目のバスや乗合タクシーは当年の運行開始日が確定してから宿を押さえると、行程の手戻りが少なくなります。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 泊まることができます。富士レークホテルはバリアフリー・ユニバーサルデザインを方針として掲げており、フルフラットの客室や福祉車両の送迎を備えるため、乳幼児から高齢の同行者まで含む一行でも組みやすい。常磐ホテルは庭園を歩く時間が滞在の中心にあり、屋外で過ごせる年齢の子どもとは相性が良い一方、夕食が個室の会席形式となる場合は所要時間を見ておきたいところです。

Q. アクセスは?

A. 起点の河口湖へは、新宿からの高速バスで約1時間45分、東京駅からは約3時間。列車なら新宿からJR中央本線特急で大月へ約70分、富士急行線に乗り継いで河口湖まで約60分です。河口湖から甲府へは車でおよそ1時間、公共交通なら路線バスの直通便で1時間半から2時間ほど。甲府からは特急で新宿へ約1時間半のため、3日目の夕方に東京へ戻る行程が無理なく成立します。

Q. インバウンド客の利用は?

A. 2軒とも公式サイトを多言語で運用しており、英語のほか中国語簡体字・繁体字・韓国語に対応します(富士レークホテルはタイ語にも対応)。河口湖側は世界的な集客地であるため国際的な受け入れ経験が厚く、甲府側は政府登録国際観光旅館としての歴史を持つ。日本文化の様式を体験したい欧米リピーターに対して、庭園・温泉・対局の間という具体的な説明材料が揃っている点が、この2軒を並べる理由でもあります。

Q. 山に登らなくても楽しめますか?

A. 成立します。この行程の骨格は「湖畔で歩く/盆地で果樹と酒に触れる/山の入口まで行く」の三段で、最後の一段は稜線に出なくても意味を持ちます。夜叉神峠までの短い登りで白根三山を眺めるだけでも山の輪郭はつかめますし、雨天なら南アルプス山岳館や甲府市内の造り酒屋、勝沼のワイナリーへ振り替えれば、テーマは崩れません。

本記事の参考情報

富士河口湖町観光情報(富士河口湖町観光連盟) — 湖畔エリアの観光・交通情報
甲府観光ナビ(甲府市観光協会) — 甲府・湯村温泉エリアの情報
南アルプス市観光協会 — 芦安・広河原方面の交通と当年の運行情報
Wikipedia: 南アルプス国立公園 — 山域の地理・歴史の背景

編集部から

この2軒に共通するのは、どちらも「泊まること自体が目的の宿」でありながら、翌朝きちんと旅人を送り出す機能を捨てていない点です。1932年と1929年——ほぼ同時期に生まれた二つの宿が、片や湖畔のユニバーサルリゾートとして、片や庭と自家源泉を抱える国際観光旅館として、それぞれ別の答えを出しながら90年以上続いている。山梨を縦に抜ける旅は、その二つの答えを一度に見られる行程でもあります。次は逆向きに、南アルプスから降りてきて富士へ抜ける3泊4日を組んだらどうなるか。稜線を先に見た目で富士山を眺めたとき、この山はどう映るのでしょうか。

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