函館・元町は、ハリストス正教会の青いドーム、カトリック元町教会の尖塔、聖ヨハネ教会の十字屋根が徒歩五分の三角形に収まる、稀有な散策地である。八幡坂を上って振り返れば港、降りれば赤レンガ。坂下の十字街から末広町、ベイエリアの金森倉庫までを、夜のライトアップ込みで歩いて完結できる弧は、半径一キロほどに過ぎない。それなのに、函館で泊まる選択肢の中心はいまも駅前の大型ホテルに偏っている。本稿では、この弧の内側、もしくは徒歩圏で坂下のテンポを崩さずに過ごせる中規模ホテルを編集部が五軒選んだ。本州が梅雨に沈む六月下旬から七月上旬、北海道はベストシーズンに入る。大人ふたりの旅程に合う宿として、規模・立地・運営の質で絞り込んだ結果である。


1. HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS — 函館市末広町

65室、デザインホテル(旧安田銀行函館支店をコンバージョン)。


HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS
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なぜ選ばれるか

八幡坂の坂下、函館港を正面に望む立地に、1932年竣工の旧銀行建築をリノベーションした一軒。市電「末広町」電停から徒歩3分、八幡坂の坂下・函館港を正面に望む立地。元町散策の起点として、これほど中心に立つホテルは他にない。最上階のシェアキッチンとルーフトップテラス、書斎のような2階のブックラウンジ、ロビーの大テーブルなど、宿泊者がゆるく交差する設計が編集部の支持を集める。

集約レビューの傾向

大人ふたり旅・カップル層からの支持が突出して厚く、デザインと立地の両立を評価する声が中心を占める。建物自体を目的に泊まる選択として機能している点が特徴的で、旧銀行のディテールを残した内装、坂下の港景、そして十字街の夜の静けさが、宿の体験を構成する三層として認識されている。設備は新築最上級ではないが、それを上回る場所性で完結している、というのが集約レビューの全体像である。

2. HAKODATE 男爵倶楽部 HOTEL&RESORTS — 函館市大手町

52室、コンドミニアム型スイートホテル。


HAKODATE 男爵倶楽部 HOTEL&RESORTS
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なぜ選ばれるか

明治期に北海道の馬鈴薯栽培を牽引した男爵芋の名祖、川田龍吉男爵に由来する宿。函館駅から徒歩3分、朝市まで徒歩3分、ベイエリアの金森倉庫まで徒歩5分という北側の起点に立つ。全室41平米以上、リビング・ダイニング・キッチンを備えたスイート構成で、函館の朝市で買い込んだ毛蟹やウニを自室で広げる過ごし方が成立する。バルコニーまたは大窓から函館湾を望む眺望付きの風呂、専用ラウンジ、地元レストランへの案内が編集部の評価軸を満たす。

集約レビューの傾向

記念日・大人ふたり旅の層からの支持が厚く、客室の広さと食事の自由度に対する満足度が際立って高い。函館の食材を自室で楽しむ滞在スタイルへの肯定的な反応が中心で、ホテルの定型から離れた、別荘に近い使い方が支持されている。一方で、フルサービスのレストラン体験を求める旅程には向きにくく、自分たちのペースで時間を組み立てたい層に合う、というのが集約された傾向である。

3. ラ・ジョリー元町 by WBF — 函館市末広町

30室、ブティックホテル(2022年4月リニューアル)。


ラ・ジョリー元町 by WBF
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なぜ選ばれるか

市電「十字街」から徒歩1分、函館山ロープウェイ乗り場まで徒歩7分。坂下から元町の中腹までを徒歩で結ぶ位置にあり、八幡坂を朝に上って港を見下ろし、夜に山頂から夜景を眺めて戻る、という導線にきれいに乗る一軒。全30室の小規模スケールに、シモンズ製マットレス・加湿空気清浄機完備の客室、オープンキッチンで提供される朝食を組み合わせる構成は、観光のリズムを乱さない宿として機能する。

集約レビューの傾向

朝食の質と立地に対する評価が二大柱になっており、特に大人ふたり旅・カップル層からの支持が厚い。30室という規模感に対し、フロント対応の丁寧さやリニューアル後の清潔感を評価する声が中心を占める。一方、フルサービスホテルとしてのレストラン・バー体験を求める旅程ではやや物足りなさが残る傾向もうかがえ、朝食と立地を主役に据える滞在に合う、というのが全体の像である。

4. 函館元町ホテル — 函館市大町

27室、和モダン中規模ホテル(新撰組屯所跡地)。


函館元町ホテル
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なぜ選ばれるか

本記事の地理的な西端、新撰組屯所跡地に建つ27室の小宿。弥生坂を望む閑静なエリアにあり、カトリック元町教会・旧函館区公会堂を徒歩圏に擁する。観光のメインストリームから一本外れた、坂上の静けさの中に身を置きたい旅人に合う立地である。3階に黒鉛珪石鉱泉「屯所の湯」を備え、窓から函館湾を眼下に望める。明治の異国情緒に「そっと寄りそう佇まい」をうたう外観・内装は、過剰な装飾を避けた抑制の取り方が編集部の好みに重なる。

集約レビューの傾向

静けさと立地の独自性に対する評価が高く、坂上の異国情緒を求める層からの支持が厚い。27室という規模感に対し、館内の落ち着きと夜の静寂を評価する声が中心を占める。一方、設備の新しさやデザインホテル的な体験を求める層よりは、街並みに溶け込む滞在を選ぶ層に向く宿である、という集約結果が見て取れる。

5. FAV HOTEL 函館 — 函館市大手町

30室、コンドミニアム型ホテル(2022年開業)。


FAV HOTEL 函館
PHOTO: FAV HOTEL 函館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

函館駅西口から徒歩5分、朝市まで徒歩3分の駅近にありながら、ベイエリア・末広町まで徒歩10分の弧に収まる、本記事の北端。最大59平米の客室にキッチン・ダイニングを備え、男爵倶楽部と同じく「自室で函館の食を完結させる」発想を、もう一段カジュアルに展開した一軒。2022年開業の比較的新しい施設で、設備の世代としては本記事中で最も新しい。大人ふたり旅で函館滞在の起点を駅前に置きたい場合の、現代的な選択肢として推したい。

集約レビューの傾向

新しさ・客室の広さ・キッチン付きという三要素への評価が中心で、グループ・家族での函館入りに使われる傾向が見て取れる。一方、本記事のテーマである「元町を徒歩で巡る」軸では、徒歩圏ぎりぎりの北端に位置するため、起点としての利便性は高いが、坂下の宿に泊まる体験そのものは別軸となる。大人ふたりの旅程としては、二泊以上の場合の一泊目に充てる使い方が合う、というのが集約された傾向である。

編集部から

本稿は当初6軒の構成を予定していたが、6軒目の候補として有力だった元町の小宿について公式サイト経由の信頼できる画像が確保できず、5軒に再編した。次回は同テーマの続編として、湯川温泉まで足を延ばす「函館・元町から温泉一泊延伸」の組み合わせを検討している。6月下旬から7月上旬の北海道は、本州の梅雨を回避しながら朝晩の涼しさを得られる稀有な季節である。八幡坂の朝、金森倉庫の夕、夜の函館山。徒歩30分の弧の中で完結する旅を、規模を絞ったホテルとともに組み立てる選択肢として、本稿の5軒を勧める。