雲海に浮かぶ「天空の城」竹田城跡の真下、和田山の旧城下町に十三室だけが点在する小さな宿がある。江戸期の酒蔵や町家を改修し、客室は通りに散らばる分散型ホテル。秋の早朝、城を見上げる谷あいに白い朝霧が立ちのぼる時間に、登山者の喧騒から離れた一棟で目覚めるための一軒として、編集部が単独で取り上げる。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

竹田城 城下町 ホテルEN — 兵庫・朝来市和田山町竹田

廃れかけた酒蔵と町家を再生した、竹田城跡の真下に点在する十三室。城下町ごと泊まる、編集部が唯一推す天空の城ステイ。

HotelPicks Score: 95 / 100  13室、城下町分散型ホテル(NIPPONIA)。

目安価格 ¥79,000–¥127,000 / 泊 (2名1室・通常期)


竹田城 城下町 ホテルEN — 兵庫・朝来市和田山町竹田 · 旧木村酒造場を再生した城下町分散型ホテルの外観
PHOTO: 竹田城 城下町 ホテルEN — 公式サイトを見る →

歴史と建築

1865年(慶応元年)創業の木村酒造場を母体とする旧家の建物群を、官民連携事業として2013年に客室4室「旧木村酒造場 EN」として再生し、その後城下町通り沿いの町家・蔵を順次改修して、2020年までに客室を13室まで広げてきた経緯がある。VMG HOTELS(NIPPONIA)が手がける分散型ホテルの代表例として知られ、建物ごとに「藤」「桜」「葛」「楠」「樫」など独立した棟名が付けられている。漆喰の白壁、瓦の重なり、酒蔵の太い梁、土壁の質感がそのまま残されており、レストランは元の酒蔵を改装した高い吹き抜けの広間に円卓を据えた構成。歴史的建造物に泊まる、というより、城下町という街区そのものをホテルとして借り受ける感覚に近い。


竹田城 城下町 ホテルEN — 元・酒蔵を改装したレストラン棟の高い梁と円卓
PHOTO: レストラン棟 — 公式サイトを見る →

滞在の体験

客室は1室1棟、もしくは1階の独立した区画として独立性が確保されている。広間に梁が露出し、襖を開ければ坪庭か小さな通りに面する造り。寝具はベッド主体だが、畳の間と座卓を併設して和の様式を残す部屋もある。バスは現代設備で、檜の浴槽や深いタブを備えた棟がある。夕食は元・酒蔵のレストラン「ENISHI(縁)」で、但馬牛と地野菜を主軸にした円卓スタイルのコース。朝食は7:30前後の開始が標準だが、雲海登山に出る宿泊者向けに早朝弁当の用意を相談できる運営体制が、城下町立地の宿として強みになる。チェックイン15:00、アウト11:00。フロントは離れた一棟にあり、到着後はスタッフが街区内を案内して客室まで送り届ける。


竹田城 城下町 ホテルEN — 太い梁と土壁を残した客室の寝室空間
PHOTO: 客室 — 公式サイトを見る →

集約レビューが映すこの宿の本質

公開レビューデータを集計すると、評価が集中するのは「建物の歴史的価値」「街区そのものを歩く滞在感」「但馬牛を軸とした夕食」「スタッフの距離感」の四点で、いずれも分散型ホテルという形式と密接に結びついている。一方で、客室ごとに造りが大きく異なるため、特定の棟の段差や水回りについて好みが分かれる傾向が確認できる。フロントから客室まで一旦外を歩く点も、雨天・厳冬期には人を選ぶ要素として現れる。総じて、ホテル設備の均一性よりも、城下町という場所性を求めて選んだ宿泊者の評価が突出して高く、宿を「目的地」として訪れる読者層に最も強く推せる構成と編集部は判断している。

立地と周辺

JR山陰本線・竹田駅から徒歩圏(5〜8分、棟により異なる)。竹田城跡の登城口(駅裏の表米神社登山道、または雲海ベストビューの立雲峡)はいずれも宿から徒歩30分圏で、朝来市観光協会の早朝バスや天空バスの停留所も近接する。播但連絡道路・和田山ICから車で約15分。城下町通り沿いには寺町、円山川支流の沿道、表米神社など徒歩で巡れる史跡が連続する。立雲峡からの雲海観望は10月下旬〜11月中旬の冷え込んだ早朝が条件で、宿から徒歩で立雲峡入口まで約30分、ピーク帯は朝4〜6時に集中する。

こんな旅人に

  • 向く:
    歴史的建造物に泊まる体験を旅の主目的にする旅、雲海登城に合わせた早朝発の1泊2日、和の建築を体感したい海外からの旅行者、車を使わない山陰本線の旅程
  • 向かない:
    幼児連れの家族(棟ごとに段差・梁の低さあり、客室間を外で移動)、ホテル内で動線を完結させたい滞在、深夜遅着の旅程(フロント受付時間・街区内案内の制約あり)

具体情報

  • 最寄り駅: JR山陰本線 竹田駅から徒歩 5〜8 分(棟により異なる)
  • 最寄りIC: 播但連絡道路 和田山IC から車で約 15 分
  • 客室数: 13室(複数棟に分散)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 夕食は元・酒蔵を改装したレストラン「ENISHI」で但馬牛コース、朝食は街区内レストランで提供
  • 創業: 1865年(木村酒造場)/ ホテルとして 2013 年再生開業、2020 年までに 13 室体制
  • 運営: VMG HOTELS & UNIQUE VENUES(NIPPONIA)
  • 雲海ベストシーズン: 10月下旬〜11月中旬の早朝(条件: 前日との寒暖差、夜間放射冷却、無風、降水なし)


よくある質問

Q. 雲海のベストシーズンと条件は?

A. 10月下旬から11月中旬が最盛期で、晩秋の冷え込みと前日との寒暖差、夜間の放射冷却、無風、降水なしの4条件が揃った早朝に立雲峡から雲海越しの竹田城跡が見える確率が高くなる。9月下旬と12月初旬も発生はあるが頻度は落ちる。発生確率はその年の気候で変動するため、編集部が推す時期は厳密には10月25日〜11月15日の14日間。

Q. 予約のタイミングは?

A. ベストシーズンの土曜は約3〜4ヶ月前に埋まり始める。13室しかないため、10月下旬〜11月中旬の週末を狙うなら盆明けには宿のスケジュールを押さえたい。平日は比較的取りやすく、火・水曜泊なら1ヶ月前でも余地が残ることが多い。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 棟により段差・梁の高さに違いがあり、未就学児にはやや厳しい棟がある。小学校高学年以上の家族2世代旅であれば、広めの棟を指定することで宿泊できる。乳幼児を伴う旅であれば、宿に事前相談のうえで対応可能な棟を確認することを推奨する。

Q. アクセスは?

A. 大阪駅から特急こうのとり+普通列車を乗り継ぎ、JR山陰本線・竹田駅まで約2時間40分。京都駅からは特急きのさき経由で約2時間20分。竹田駅から宿まで徒歩5〜8分(棟による)。車であれば播但連絡道路・和田山ICから約15分、大阪市内から約2時間30分。レンタカーなしの旅程が成立する数少ない雲海地ステイ。

Q. インバウンド客の利用は?

A. NIPPONIAブランドとして欧米・東アジア圏の旅行者が一定数を占めており、英語対応のスタッフが常駐する。歴史的建造物に泊まる体験を求める層と、雲海というSNS拡散ワードに反応する層の双方を捉えており、円安期にはベストシーズンの稼働が前年比で上昇する傾向が公開予約データから読み取れる。

本記事の参考情報

・朝来市公式サイト 竹田城跡 — 城跡の入山時間・閉山期間・現地ルール
・Wikipedia: 竹田城 — 城郭史・「天空の城」と呼ばれた経緯

編集部から

HotelPicksでは「天空の城」というキーワードを冠した宿を、これまで岐阜・苗木城周辺の中津川エリアで1度だけ取り上げてきた(特集 #161)。今回の竹田城は規模も歴史的背景も別物で、城下町という街区そのものをホテルに変えた稀有な事例として、編集部は単独で取り上げる意義があると判断した。1865年の酒蔵を出発点に、街並み保全と分散型ホテル運営を10年単位で両立させてきた運営の蓄積は、他の地方都市の城下町再生プロジェクトにとっても参照点になる。次は、同じく「街区ホテル」の系譜にある丹波篠山や尾道の事例を掘り下げたい。

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