2026年12月15日に開業する「HOTEL THE MITSUI HAKONE」は、箱根登山電車・小涌谷駅から徒歩約2分、約135,500㎡(約14ha)の敷地に126室を置く、HOTEL THE MITSUI ブランドの2軒目である。かつて三井家の別荘が群をなしていた土地をそのまま敷地とし、全客室に敷地内から湧く天然温泉の専用風呂を備える。編集部がこの一軒を開業前に単独で取り上げるのは、箱根という成熟しきった温泉地に、これだけの面積と客室規模を同時に満たす新規開業がしばらく現れていなかったからだ。以下、公式に公表された数値と、開業初月にあたる2026年12月15日〜2027年1月の公開販売価格の集計をもとに、この宿を読み解く。

(暫定) 126室、リゾートホテル。神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷。
目安価格 ¥190,000–¥357,000 / 泊 (2名1室・2026年12月15日〜2027年1月)
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金。公式の宿泊約款では、室料に15%のサービス料が加算され、これに消費税と箱根町の入湯税が加わる旨が明記されています。
なぜ、いま小涌谷なのか
箱根に新しい宿ができること自体は珍しくない。ただし、この規模で、この場所に、というと話は別である。ホテルが建つのは箱根登山電車・小涌谷駅のすぐ上、かつて三井家の別荘が点在していた一帯だ。開発を担った三井不動産と三井不動産リゾートマネジメントは、この土地の由来をブランドの根拠に据えている。京都で2020年に開業した「HOTEL THE MITSUI KYOTO」に続く2軒目という位置づけで、運営は「ハレクラニ沖縄」と同じ会社が担う。マリオット・インターナショナルの「ラグジュアリーコレクション」との提携も公表されており、海外の会員層を最初から視野に入れた設計であることがわかる。
敷地は富士箱根伊豆国立公園の中にある。約135,500㎡、坪に直せば約40,980坪。高低差は約45mあり、敷地を流れる蛇骨川より南、浅間山側は原生林をそのまま残すという方針が公表されている。箱根で14haを一体で押さえた新規開業は、そう何度も見られるものではない。土地そのものが、この宿の最大の資産である。

建築とデザイン
設計・施工は竹中工務店、プロジェクトマネジメントは日建設計。インテリアデザインはトロント拠点の Yabu Pushelberg が担当している。高低差のある地形に沿って建物を分けて配置することで土地の改変を抑え、既存の樹木を可能な限り活用・移植したことも公表されている。敷地内に湧く温泉の熱を熱交換システムで館内エネルギーに回す設計も導入された。
緑に包まれたアプローチを登り切ると、大屋根を設えたエントランスが現れ、その先に浅間山が開ける——という一連の体験が、この宿の入口の設計思想として明示されている。冒頭の写真がまさにその場面だ。斜面地のリゾートは、到着の瞬間の演出で価値の大半が決まる。開業前の図面段階でここまで動線の物語を言語化している点は、編集部として評価したい。
敷地の奥には、離れ「四季庵」が置かれる。建設工事全般を担ったのは、桂離宮の保存工事や京都迎賓館の建設に携わった京都の安井杢工務店で、敷地内の樹木も一部用いた数寄屋造だという。茶会などでの利用が想定されている。京都の姉妹館で「四季の間」の再現を手掛けたのと同じ工務店が、箱根では新たに一棟を建てた格好になる。
客室 — 126室、45〜240㎡
客室構成は10タイプ。デラックスルーム48㎡が43室と最も多く、プレミアルーム48〜57㎡が30室、グランドルーム51㎡が14室、Onsenガーデンルーム45〜50㎡が22室と続く。上位はデラックススイート105㎡が7室、Onsenガーデンスイート100㎡が4室、プレジデンシャルスイート240㎡が1室。独立型のヴィラは蛇骨川に寄り添うように5棟が置かれ、ヴィラ110〜112㎡が3棟、専用庭52㎡を別に持つテラスヴィラ101㎡が1棟、最上位のシグネチャーヴィラ217㎡が1棟という内訳である。編集部の試算では、126室の単純平均はおよそ59㎡になる。
特筆すべきは、全室に敷地内から湧く天然温泉を引いた専用風呂と、バルコニーまたはテラスが備わることだ。バルコニー面積も客室タイプごとに10〜120㎡と公表されており、屋外の居場所を客室体験の一部として数値で定義している。グランドルームは間口約6mを取り、開口部の広さで外の景色との距離を詰める設計だという。多くの客室では、浅間山を望むビューバスが用意される。


温泉 — 全室の内湯と、水着で入るサーマルスプリング
湯は敷地内から湧く小涌谷温泉。全客室の専用風呂に加えて、共用施設として「サーマルスプリング」が置かれる。これは水着を着用して入る温浴施設で、京都の姉妹館が市街地の地下に設けたものとは趣が異なり、箱根では屋内の内湯と、屋外の立ち湯を持つ。眼前に浅間山、足元に蛇骨川のせせらぎという配置だ。
ここは、この宿を選ぶかどうかの分岐点になる。共用の温浴施設が水着着用である以上、裸で入る大浴場を旅の目的に据える人には向かない。逆に、ふたりで同じ湯に長く浸かる時間を旅の中心に置くなら、この設計は理にかなう。加えて、カップルルーム1室を含む5室のトリートメントルームを持つスパと、自然光の入るフィットネスジムが併設される。「清閑に委ねる」というコンセプトが公表されており、館内での過ごし方を静けさ側に振り切っていることがうかがえる。


食 — 三渓、RIVERINE、LAMBENT
総料理長には、ザ・リッツ・カールトン東京の副総料理長やハレクラニ沖縄の総料理長を歴任した髙橋浩史が就く。中核となるのが日本料理「三渓(サンケイ)」で、会席32席・鮨10席・鉄板焼14席・個室8席の計64席を、竹細工で演出した空間に納める。料理長は3年連続でミシュラン1つ星を獲得した経験を持つ黒須浩之。「身土不二」——身体とそれを取り巻く環境は切り離せない、という仏教由来の言葉を献立の思想に置く。
オールデイダイニング「RIVERINE(リヴァライン)」は96席(うち個室8席)とテラス席。朝食はビュッフェ、夕食は相模湾の魚介や旬の食材を使ったグリル料理が中心で、ショーキッチンを備える。バー「The Bar LAMBENT(ランベント)」は34席とテラス席で、東海道をモチーフに京都・箱根・日本橋をつなぐアートが壁一面に広がるという。国産のプレミアムウイスキーとシグネチャーカクテルを軸に据えた構成だ。会席で始めて、バーで終える——1泊の夜の組み立てが、館内だけで完結するようにできている。

敷地を歩く、周辺を歩く
14haという面積は、宿の中に散歩コースが成立する広さである。敷地内には散策路が整備され、蛇骨川の川辺にテラスデッキ、木々に囲まれたヨガテラスが置かれる。ここまでが館内の話だ。
外に出れば、幅20m・高さ3mの火山岩の岩肌を幾千の細い筋になって水が流れ落ちる「千条の滝」がある。小涌谷駅からは徒歩15〜20分ほど、箱根町観光協会がハイキングコースとして案内する浅間山ルートの入口でもある。彫刻の森美術館、大涌谷、芦ノ湖の箱根町港は、いずれも車で足を延ばせる範囲にある。美術館めぐりで箱根を組む旅程なら、この宿を拠点に据える手も十分に成り立つ。
開業初月という時期の意味
2026年12月15日という開業日は、読者にとって二つの意味を持つ。
ひとつは、庭と森が冬枯れであること。原生林を残した斜面地のリゾートは、葉が落ちた季節にこそ建築の輪郭と地形の高低差がよく見える。分棟配置がどう斜面に噛んでいるか、蛇骨川がどこを流れているかを、視覚的に最も理解しやすいのが冬である。緑に覆われた初夏の姿とは、まったく別の宿に見えるはずだ。
もうひとつは、価格である。公開販売価格を集計すると、開業初月〜2027年1月の掲載価格は、2027年2月以降の期間と比べておよそ1割低い水準にある。新規開業のホテルが立ち上がり期に採る一般的な価格設定と整合する動きで、開業直後だから割高、という直感は少なくとも数字の上では当たらない。ただし年末年始は例外で、12月31日・1月1日は最も手頃な客室でも¥320,000台からとなり、通常期の倍以上に跳ね上がる。
そして1月2日・3日。ホテルのすぐ下を走る国道1号は、箱根駅伝の往路5区・復路6区のコースにあたる。小涌谷の踏切は、選手が通過する瞬間に電車を停止させる特別措置で知られる箱根駅伝の名所である。開業からわずか2週間半で、この宿は日本で最も人の集まる正月の道路に面することになる。静けさを求めて来るなら、その2日は避けるという判断もある。
1泊2日、どう過ごすか
編集部が想定する組み立ては単純だ。新宿からロマンスカーで箱根湯本へ最速約1時間15分、登山電車に乗り換えて小涌谷へ。駅から徒歩2分の坂を上がり、大屋根をくぐる。午後は客室の専用風呂と、サーマルスプリングの屋外立ち湯を行き来して過ごす。夕方、敷地内の散策路を蛇骨川まで下りる。夜は「三渓」の会席か鉄板焼、そのままバー「LAMBENT」へ。翌朝は「RIVERINE」のビュッフェを済ませ、千条の滝まで歩いて戻る。移動を一切増やさず、14haの中で完結させる——それがこの宿の設計に最も素直な過ごし方である。
具体情報
- 所在地: 神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷字箕作沢450番1他(富士箱根伊豆国立公園内)
- 最寄り駅: 箱根登山電車「小涌谷」駅から徒歩約2分(小田原駅から小涌谷駅まで約50分)
- 車: 小田原厚木道路 小田原箱根口ICから約25分/羽田空港からタクシーで約2時間
- 開業日: 2026年12月15日(宿泊予約の受付開始は2026年7月15日)
- 客室: 126室・10タイプ、45〜240㎡(全室に敷地内源泉の専用風呂とバルコニーまたはテラス)
- 敷地: 約135,500㎡(約14ha・約40,980坪)、高低差約45m
- 食事: 日本料理「三渓」64席(会席・鮨・鉄板焼・個室)/オールデイダイニング「RIVERINE」96席+テラス(朝食はビュッフェ)/バー「The Bar LAMBENT」34席+テラス
- 温浴・スパ: サーマルスプリング(水着着用、屋内+屋外立ち湯)、SPAトリートメントルーム5室(うちカップル用1室)、フィットネスジム
- 設計・施工: 竹中工務店/PM: 日建設計/インテリア: Yabu Pushelberg/離れ「四季庵」: 安井杢工務店
- 料金の内訳: 室料+サービス料15%に、消費税と箱根町の入湯税が加算(公式宿泊約款)
- 子ども: 12歳以下が保護者と同室の場合、追加料金なし(客室に十分なスペースがある場合に限る/公式宿泊約款)
- 宿泊予約の電話: 0460-83-3122(平日9:00〜18:00)
向く人 / 向かない人
-
向く:
記念日に一軒で完結する旅を組む大人ふたり、客室の温泉と面積を最優先する旅、車を使わず電車で箱根へ入る旅程、開業初期の運営を自分の目で確かめたい人、水着で入る温浴施設に抵抗のないふたり連れ -
向かない:
1泊2名¥150,000以内に収めたい旅程(最も手頃な客室でも¥133,000前後から)、裸で入る共同大浴場を目的とする人(共用温浴施設は水着着用)、箱根の観光地を数多く回る詰め込み型の日程(敷地内で過ごす設計のため滞在時間が要る)、開業直後の運営の揺らぎを避けたい人、正月2日・3日の静けさを期待する人(駅伝コースに面する)
編集部の評価
88 / 100(暫定)
この宿は開業前であり、宿泊者による公開レビューデータがまだ一件も存在しません。したがって本記事のスコアには、通常の記事で用いている公開レビューデータの集計は含まれていません。上記は、公表済みの立地(小涌谷駅徒歩2分・国立公園内14ha)、客室仕様(全126室に敷地内源泉の専用風呂、最小45㎡)、館内施設(サーマルスプリング・スパ5室・3つの料飲施設)、運営体制(ハレクラニ沖縄・HOTEL THE MITSUI KYOTO と同一運営会社)という検証可能な要素のみを編集部が評価した暫定値です。開業後、宿泊者の評価が蓄積した時点で再算定します。
よくある質問
Q. 開業日と予約開始はいつですか?
A. 開業日は2026年12月15日(火)です。宿泊予約の受付は2026年7月15日に開始されています。電話予約は0460-83-3122で平日9:00〜18:00に受け付けられており、詳細は公式サイトで案内されています。開業前後で客室構成や料金体系が変わる可能性があるため、実際の予約時は公式サイトの最新情報を確認してください。
Q. 予算はどのくらい必要ですか?
A. 公開販売価格を集計すると、開業初月〜2027年1月の目安は1泊2名で¥190,000〜¥357,000です。最も手頃な客室タイプに絞れば¥133,000前後から。12月31日・1月1日は下限が¥320,000台まで上がります。なお公式宿泊約款では、室料に15%のサービス料が加算され、これに消費税と箱根町の入湯税が加わると明記されています。
Q. 大浴場はありますか?
A. 全126室に敷地内源泉を引いた専用風呂が備わります。一方、共用の温浴施設は水着を着用して入る「サーマルスプリング」で、屋内の内湯と屋外の立ち湯が用意されます。裸で入る共同大浴場は、開業時点で公表されている施設一覧には含まれていません。館内で湯を楽しむ形が、従来の温泉旅館とは異なる点に注意が要ります。
Q. アクセスは?
A. 箱根登山電車「小涌谷」駅から徒歩約2分です。新宿からロマンスカーで箱根湯本まで最速約1時間15分、東京駅からは東海道新幹線で小田原まで約35分、小田原から小涌谷までは登山電車で約50分。車の場合は小田原厚木道路 小田原箱根口ICから約25分、羽田空港からはタクシーで約2時間とされています。
Q. 子連れでも泊まれますか?
A. 公式宿泊約款には、12歳以下が保護者と同室に泊まる場合、客室に十分なスペースがあることを条件に追加料金は不要と記載されています。客室は最小でも45㎡と広く、105㎡のデラックススイートや100㎡超のヴィラも用意されるため、家族での利用は成立します。ただし館内は静けさを軸に組み立てられており、共用温浴施設は水着着用である点を踏まえた計画が要ります。
Q. 開業直後に泊まる意味はありますか?
A. 冬枯れの季節は葉が落ち、原生林を残した斜面地の地形と分棟配置の輪郭が最もよく見えます。公開販売価格の集計でも、開業初月〜2027年1月は2027年2月以降よりおよそ1割低い水準です。一方で、開業直後は運営が安定しきらない時期でもあります。建築と土地を見に行くなら開業初月、サービスの完成度を求めるなら数ヶ月待つ——編集部としてはそう整理します。
本記事の参考情報
・HOTEL THE MITSUI HAKONE 公式サイト — 客室・温泉・レストラン・アクセスの一次情報
・三井不動産 ニュースリリース(2026年7月13日) — 開業日・敷地面積・客室タイプ別の面積と室数
・箱根町観光協会「千条の滝」 — 周辺の自然と散策コースの情報
・環境省 富士箱根伊豆国立公園 — 立地する国立公園の基礎情報
編集部から
箱根は、明治以来の別荘地と、戦後の大型温泉ホテルと、この15年ほどの小規模ラグジュアリーが層になって積み重なった土地である。そこへ、14haを一体で使う126室が加わる意味は小さくない。同エリアの既存高価格帯と比べて掲載価格の中央値でおよそ6割高い水準に立つということは、この宿が箱根の価格の天井を一段押し上げる側に回るということでもある。それが土地の価値に見合うかどうかは、開業後に宿泊した人たちの評価が決める。編集部としては、まず冬枯れの敷地を歩いてみたい。あなたなら、開業初月の箱根で、どの一日を選ぶだろうか。
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