雨の日の箱根は、美術館を一日一館に絞り、その近くの宿に泊まり継ぐと最も満たされる、というのが編集部の結論です。ポーラ美術館では「モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目―モネと21世紀のアート」が2027年4月7日まで開かれており、彫刻の森美術館、岡田美術館と合わせた三館が、道のりにして6kmほどの範囲に収まります。本稿では、強羅・小涌谷・仙石原の三軒を例に、秋雨の週末にも翌年の梅雨にも使える「雨を前提にした大人の箱根」の組み立て方を書きます。
| # | 宿 | エリア / 組む美術館 | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 箱根・強羅 佳ら久 | 強羅 / 彫刻の森美術館 | 91 | 70 | ¥125–¥184k | 強羅駅から徒歩約3分。全70室に温泉露天風呂が付く |
| 2 | 箱根・翠松園 | 小涌谷 / 岡田美術館 | 93 | 23 | ¥108–¥139k | 大正14年築の登録有形文化財を料亭に据えた全23室 |
| 3 | 箱根リトリート före | 仙石原 / ポーラ美術館 | 89 | 37 | ¥48–¥61k | 森の中に棟が点在する37室。薪ストーブ付きの客室もある |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
雨の箱根は、なぜ歩きやすいのか
箱根の人気を支えているのは、晴れた日の景色です。芦ノ湖越しの富士山、ロープウェイから見下ろす大涌谷、仙石原のすすき草原。どれも空が開けていてこそ成立する名所で、予報に傘のマークが並ぶと、日帰りの計画はまず見直しの対象になります。景色を目的にした人の足が鈍るぶん、雨の日の箱根は屋内に目的を持つ旅人にとって歩きやすい場所になる、と編集部は考えています。
そして箱根は、屋内の目的に事欠かない土地です。仙石原の森にポーラ美術館、二ノ平に彫刻の森美術館、小涌谷に岡田美術館。芦ノ湖畔の成川美術館まで含めれば、山ひとつの中に性格の違う美術館が並びます。雨は鑑賞の妨げにならないどころか、ガラス越しの森を濃くし、展示室の静けさを深くする。雨の箱根は「外れの日」ではなく、目的を替えれば当たりの日になる、と言えます。
一日一館という贅沢
三館を一日で回ることは、時刻表の上では可能です。ただ、編集部はそれを勧めません。ポーラ美術館と岡田美術館はどちらも開館が午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)。岡田美術館は5階建ての展示室に日本・中国・韓国の美術品が並び、ポーラ美術館には企画展のほかに森の遊歩道があります。どちらも、急いで抜けるようには設計されていない館です。
そこで一日一館。午前は宿の湯に浸かり、昼前に美術館へ入って、閉館近くまで居る。夕方には歩いて、あるいは短い送迎で宿に戻り、濡れた靴を脱いで夕食を待つ。移動を一日一回に減らすと、雨の山道でバスを待つ時間が旅程から消えます。泊まり歩くという形は、贅沢である前に、雨天に対する最も合理的な答えである、というのが本稿の立場です。
湯本から強羅、小涌谷、仙石原へ — 宿でつなぐ動線
起点は箱根湯本。ここから箱根登山電車で山を上がり、強羅で一泊目、小涌谷で二泊目、仙石原で三泊目という順に進みます。二泊三日なら三軒のうち二軒を選べば足ります。以下、編集部が動線上に置いた三軒を、組み合わせる美術館とともに紹介します。
1. 箱根・強羅 佳ら久 — 強羅 × 彫刻の森美術館
強羅駅から徒歩約3分、全70室に温泉露天風呂。雨の一泊目を預けるのに最も迷いのない一軒。
HotelPicks Score: 91 / 100 70室、温泉旅館(中規模)。
目安価格 ¥125,000–¥184,000 / 泊 (2名1室・通常期)

登山電車の終点から傘を差して数分。東棟と西棟の二棟からなる館内に入ってしまえば、あとは濡れずに過ごせます。客室は約56㎡が基本で、全室に温泉露天風呂付き。雨の日は大浴場へ通う回数が減るものですが、この宿ではそれが欠点になりません。彫刻の森美術館までは道のり約1.3km、登山電車なら隣の彫刻の森駅から歩いて約2分です。加えて、ポーラ美術館のモネ展に合わせた入館料付きの宿泊プランを販売している点も、本稿の主題と重なります。公開レビューデータを集計すると、食事とラウンジ、客室の湯への評価が厚く、価格に見合うかどうかと食事の好みでは意見が分かれる、という傾向が読み取れます。
向く人 / 向かない人
-
向く:
電車で箱根に入る二人旅、客室の湯で長く過ごしたい人、彫刻の森とポーラ美術館の両方を視野に入れる旅程 -
向かない:
小さな宿の静けさを求める人(70室の規模)、宿泊費を美術館や食事に回したい旅程(三軒で最も高い価格帯)
具体情報
- 最寄り駅: 箱根登山電車 強羅駅から徒歩約3分
- 美術館まで: 彫刻の森美術館へ道のり約1.3km(徒歩約17分、または電車で1駅)
- 客室: 全70室、約56㎡が基本。全室に温泉露天風呂
- 送迎: JR小田原駅との無料送迎が1日2便(乗車45〜50分)
- 駐車場: 宿泊者専用あり(EV充電対応スペース7台分)
- 開業: 2020年
彫刻の森美術館について、ひとつ断っておきます。1969年に開館した国内初の野外美術館で、主役は屋外の彫刻です。雨の日に「濡れずに回れる館」ではありません。それでも編集部がここを外さないのは、雨に濡れたブロンズと芝の色が晴天とは別の作品に見えるからで、屋内展示を軸に据え、傘を差して庭を歩く時間を短く挟む、という回り方が合います。本降りの日は、順番を入れ替えて岡田美術館を先にする判断も有効です。
2. 箱根・翠松園 — 小涌谷 × 岡田美術館
岡田美術館まで徒歩約6分。大正14年築の登録有形文化財を料亭に据えた、全23室の宿。
HotelPicks Score: 93 / 100 23室、温泉旅館(小規模)。
目安価格 ¥108,000–¥139,000 / 泊 (2名1室・通常期)

かつて三井家の別荘として建てられた「三井翠松園」。その建物を料亭として使い、周囲に客室棟を配したのがこの宿です。23室はすべて間取りが異なり、広さは約55〜122㎡、全室に自家源泉掛け流しの露天風呂が付きます。岡田美術館へは歩いて約6分。美術館で東洋の古美術を見たあと、大正の座敷で夕食をとるという一日の流れが、移動をほとんど挟まずに成立します。公開レビューデータを集計すると、料理と接客、客室の湯への評価が厚く、到着時の案内については評価にばらつきがある、という傾向が読み取れます。三軒のうち、編集部が最も高い評価を置いた一軒です。
向く人 / 向かない人
-
向く:
岡田美術館に半日以上かけたい人、建築と庭を含めて宿を味わう二人旅、客室の湯を中心に過ごす記念日 -
向かない:
大浴場の広さを重視する人(客室の露天風呂が主役)、駅から歩いて着きたい旅程(小涌谷駅からは送迎利用が前提)
具体情報
- 最寄り: 箱根登山電車 小涌谷駅から送迎車で約5分 / 小涌園バス停から徒歩約3分
- 美術館まで: 岡田美術館へ徒歩約6分
- 客室: 全23室、約55〜122㎡。全室に自家源泉掛け流しの露天風呂
- 食事: 「料亭 紅葉」(大正14年築・国登録有形文化財)で日本料理と鉄板料理
- 泉質: 弱アルカリ性の単純温泉
- 駐車場: 無料(予約時に申し出)
3. 箱根リトリート före — 仙石原 × ポーラ美術館
仙石原の森に棟が点在する37室。雨音と薪の火で、モネを見たあとの夜が締まる一軒。
HotelPicks Score: 89 / 100 37室、森のブティックホテル(小規模)。
目安価格 ¥48,000–¥61,000 / 泊 (2名1室・通常期)

ポーラ美術館は森の中に建ち、歩いて行ける宿はごく限られます。そこで編集部は、同じ仙石原で道のり約2.4kmの位置にあるこの一軒を選びました。客室は27㎡のコンパクトな20室から、リビングと寝室が分かれた約50㎡、109㎡の一室まで。上位の客室には薪ストーブが備わり、雨で冷えた夜に火を眺める時間が持てます。三軒のうち最も手の届きやすい価格帯で、連泊の締めに置きやすい点も推したい理由です。公開レビューデータを集計すると、食事と温泉、静かな環境への評価が高い一方、客室設備の新しさと価格感については意見が分かれる、という傾向が見て取れます。
向く人 / 向かない人
-
向く:
ポーラ美術館に開館から入りたい人、森の静けさを優先する一人旅や二人旅、宿泊費を抑えて連泊したい旅程 -
向かない:
新しい設備を条件にする人、徒歩だけで美術館へ行きたい人(約2.4kmあり、雨天は車かバスが現実的)
具体情報
- 最寄り: 箱根登山バス「俵石・ガラスの森」バス停
- 美術館まで: ポーラ美術館へ道のり約2.4km
- 客室: 全37室、27〜109㎡(27㎡が20室、約50㎡が16室、109㎡が1室)
- 駐車場: 45台(事前予約不要)
モネを、雨の森で見るということ
最後の一館にポーラ美術館を置いたのには理由があります。会期中の企画展は、モネの没後100年と開館25周年を記念するもので、題名のとおり、モネと21世紀の美術を並べて取り上げます。モネが描き続けたのは、水面と光と、天気そのものでした。ガラスを多用した建物の外で森が濡れている日に、その絵の前に立つ。晴天よりも雨の日のほうが、絵と窓の外がつながって感じられる、と編集部は考えています。
梅雨に開幕したこの展覧会は、秋雨の時期を越え、翌春まで続きます。12月1日は展示替えのため全館休館となるので、その日だけは旅程から外してください。雨の予報を見て予定を崩すのではなく、雨の予報を見てから箱根の宿を取る。そういう旅の組み方が、この山には合っています。
よくある質問
Q. 雨の箱根で美術館を巡るなら、ベストシーズンはいつですか?
A. 編集部が推す時期は、6月の梅雨と、9月下旬から10月の秋雨の頃です。森の緑や色づき始めた木々が雨で濃く見え、景色目当ての人出が落ち着きます。ポーラ美術館のモネ没後100年記念展は2027年4月7日まで開かれているため、冬の雨や雪の日に訪ねる選択肢もあります。
Q. 三つの美術館は一日で回れますか?
A. 時間の上では可能ですが、本稿では一日一館を勧めています。ポーラ美術館と岡田美術館はともに午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)で、どちらも展示量が多い館です。雨天は移動に余裕を見る必要があり、一日一館にして近くの宿に泊まるほうが、鑑賞の時間を削らずに済みます。
Q. 車がなくても、この三軒を泊まり歩けますか?
A. 可能です。箱根・強羅 佳ら久は強羅駅から徒歩約3分で、小田原駅との無料送迎も1日2便あります。箱根・翠松園は小涌谷駅や小涌園バス停からの送迎を予約時に頼めます。箱根リトリート före は路線バスの「俵石・ガラスの森」バス停が最寄りで、仙石原ではバスの時刻を事前に確かめておくと安心です。
Q. 彫刻の森美術館は雨でも楽しめますか?
A. 野外展示が中心の美術館なので、屋内だけで完結はしません。屋内の展示室を軸に、小雨の合間に庭を歩く回り方が合います。本降りの日は岡田美術館やポーラ美術館を先に回し、彫刻の森は雨脚が弱まる日に充てる、という入れ替えを前提に旅程を組むと無理がありません。
Q. 予算はどのくらい見ておけばよいですか?
A. 目安価格は1泊2名1室で、箱根リトリート före が¥48,000〜¥61,000、箱根・翠松園が¥108,000〜¥139,000、箱根・強羅 佳ら久が¥125,000〜¥184,000です。二泊三日なら、価格帯の異なる二軒を組み合わせると全体の予算を調整しやすくなります。週末や連休は上振れする傾向があります。
本記事の参考情報
・ポーラ美術館 — 企画展の会期、開館時間、休館日
・彫刻の森美術館 — 野外展示と屋内展示の案内
・岡田美術館 — 開館時間と利用案内
・箱根町観光協会 — エリアの交通と観光情報
編集部から
三軒に通底する選定の軸は、美術館までの近さと、雨の日に館内で過ごす時間の質です。客室の湯で完結する強羅と小涌谷の二軒、森と火で夜を過ごす仙石原の一軒。性格は違いますが、どれも「外に出なくてよい理由」を宿の側が用意しています。晴れを待つ旅は、予報ひとつで崩れます。雨を前提にした旅は、崩れようがありません。次の雨の週末、どの一館から始めますか。
本稿で触れた宿
- 箱根・強羅 佳ら久(強羅)— HotelPicks Score 91 / 彫刻の森美術館と組む一泊目
- 箱根・翠松園(小涌谷)— HotelPicks Score 93 / 岡田美術館まで徒歩約6分
- 箱根リトリート före(仙石原)— HotelPicks Score 89 / ポーラ美術館と組む締めの一泊