九谷焼と山中漆器を歩いて巡る加賀温泉郷の旅に合う宿として、編集部が選んだ 7 軒を紹介する。山中・山代・片山津の「加賀三湯」は、日本最古級の温泉地でありながら、九谷焼の五彩と 900 年続く山中漆器という二つの工芸が徒歩圏に密集する稀有なエリアである。北陸新幹線敦賀延伸から 2 年目を迎えた 2026 年、東京から加賀温泉までは 2 時間 40 分で恒常化した。窯元や漆工房を歩き、夜は源泉かけ流しの湯にひたる——40〜50 代の大人ふたりの夏旅に向く動線を軸に、老舗から現代デザイン旅館まで幅をもたせて選んでいる。
| # | ホテル | エリア | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | あらや滔々庵 | 山代温泉 | 18 | ¥114–¥189k | 須田菁華の九谷を食器に用いる加賀の老舗 |
| 2 | べにや無何有 | 山代温泉 | 16 | ¥150–¥225k | 全室露天風呂、庭に溶ける現代数寄屋 |
| 3 | 胡蝶 | 山中温泉 | 10 | ¥109–¥158k | 書院造り全10室、山中漆器の器で味わう加賀懐石 |
| 4 | 湖畔の宿 森本 | 片山津温泉 | 28 | ¥52–¥71k | 柴山潟と白山を望む創業130余年の湖畔宿 |
| 5 | たちばな四季亭 | 山代温泉 | 20 | ¥81–¥124k | 全館桐の無垢床、薬王院庭を望む湯の曲輪の宿 |
| 6 | かがり吉祥亭 | 山中温泉 | 48 | ¥50–¥71k | こおろぎ橋至近、全室リバービューの立ち湯露天 |
| 7 | 花紫 | 山中温泉 | 27 | ¥121–¥225k | 鶴仙渓沿い、工芸と茶を編んだ文化サロン |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
1. あらや滔々庵 — 山代温泉
山代の湯の曲輪に十八室。九谷の名工・須田菁華の器で加賀の食を供する、工芸動線の起点として編集部が真っ先に推したい一軒。
18室、温泉旅館(老舗)。
目安価格 ¥114,000–¥189,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
山代温泉の中心「湯の曲輪」に建ち、温泉守として十八代を重ねた加賀屈指の老舗である。第一の理由は工芸との近さ——魯山人が逗留した地として知られ、九谷焼の名窯・須田菁華の工房は徒歩圏にある。第二に、その須田菁華の器を実際の食事に用いる食卓の設計。第三に、すべての浴槽に山代の源泉をかけ流す湯づかいで、工芸を歩いた一日を締めくくる動線が整っている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、料理と器の取り合わせ、そして仲居の所作に対する評価が突出して高い。建物の歴史性を価値ととらえる層と、設備の新しさを求める層とで受け止めが分かれる傾向も見て取れる。総じて、価格帯を理解したうえで「加賀の本流」を体験したい大人ふたりに支持されている一軒と言える。
向く人 / 向かない人
-
向く:
記念日・カップル旅、九谷焼や器に関心のある大人、加賀の食文化を腰を据えて味わいたい人 -
向かない:
幼児連れの家族(静けさ重視で客室構成が大人向き)、最新設備や大浴場の規模を最優先する人、価格を抑えたい旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約10分(送迎あり・要確認)
- 立地: 山代温泉「湯の曲輪」中心、古総湯まで徒歩約2分
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 加賀会席(須田菁華ほか九谷・輪島塗の器を使用)
- 歴史: 温泉守として十八代、開湯1300年の山代温泉中心部
2. べにや無何有 — 山代温泉
山庭を囲むように建つ全16室、すべてに温泉露天風呂。器に須田菁華と輪島塗を選ぶ、加賀の現代数寄屋。
16室、温泉旅館(デザイン)。
目安価格 ¥150,000–¥225,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
緑深い山庭を客室がぐるりと囲む配置で、全16室に山庭を望む温泉露天風呂が付く。第一の魅力は、自然と建築が一体化した静けさそのもの。第二に、加賀・能登の季節の食材を須田菁華の九谷や山中・輪島の塗りの器で供する食の設計で、工芸テーマの旅程と響き合う。第三に、薬草を用いるスパ「円庭施術院」など、湯と工芸に加えて滞在の密度を高める仕掛けが整っている点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、静謐な空間設計と全室露天風呂への満足度が際立つ。一方で、館内に段差や階段があり、移動を伴う構造への言及も見られる。価格は加賀三湯でも上位だが、それに見合う「滞在そのものを目的化できる宿」として、大人ふたりの記念旅に選ばれる傾向が読み取れる。
向く人 / 向かない人
-
向く:
静けさとデザインを優先する大人ふたり、全室露天風呂を求める人、工芸と料理の取り合わせを味わいたい人 -
向かない:
幼児連れの家族、館内の段差・移動を避けたい人、観光地巡り中心で宿に戻る時間が短い旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約10分(送迎あり・要確認)
- 立地: 山代温泉、古総湯まで徒歩圏
- 客室: 全16室すべてに温泉露天風呂付き
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜12:00
- 食事: 加賀・能登の食材を九谷・輪島塗の器で供する会席
3. 胡蝶 — 山中温泉
昭和初期の書院造りを生かした全10室。山中漆器の器で加賀懐石を味わう、山中温泉でもっとも静かな一軒。
10室、料理旅館。
目安価格 ¥109,000–¥158,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
山中温泉に建つ全10室の小規模な料理旅館で、昭和初期の書院造りの建物を今に伝える。第一の価値は、客室数を絞ることで保たれる静けさと一室ごとの設えの濃度。第二に、加賀懐石を山中漆器の塗りの器で供する食の設計——山中は900年続く漆器の産地であり、その本拠地で塗り物の椀に向き合える意味は大きい。第三に、鶴仙渓の遊歩道や漆器工房群への徒歩動線が短く、工芸を歩く拠点として機能する点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理の質と器づかい、そして少人数ゆえの細やかな対応への評価が高い。一方、歴史ある木造建築であることから、現代的な快適性を最優先する層には好みが分かれる傾向もある。大人ふたりで静かに加賀の食と漆器を味わいたい旅程に、強く向く一軒と言える。
向く人 / 向かない人
-
向く:
山中漆器に関心のある大人ふたり、小規模旅館の静けさを好む人、加賀懐石をじっくり味わいたい人 -
向かない:
幼児連れの家族、大浴場の規模を求める人、新しい設備の快適性を最優先する旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約20分(バス・送迎あり・要確認)
- 立地: 山中温泉、鶴仙渓・ゆげ街道へ徒歩圏
- 客室: 全10室、書院造りの設え
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 加賀懐石(山中漆器の器を使用)
4. 湖畔の宿 森本 — 片山津温泉
柴山潟と白山を一望する創業130余年の湖畔宿。三湯のなかで価格を抑えつつ景観で選ぶなら、この片山津の一軒。
28室、温泉旅館。
目安価格 ¥52,000–¥71,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
片山津温泉は柴山潟のほとりに開けた温泉地で、湖が一日のうちに七度色を変えるとされる。森本は1892年(明治25年)創業の老舗で、第一の魅力はその柴山潟と霊峰白山を望む湖畔の眺望。第二に、湖を見晴らすパノラマ露天風呂を備えた湯づかい。第三に、加賀三湯のなかでは価格を抑えつつ、能登牛やのどぐろといった地の食材を楽しめるコストバランスで、工芸動線に景観の一泊を組み込みやすい点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、湖を望むロケーションと夕景・朝景への評価が群を抜いて高い。料理の地元食材づかいへの支持も厚い。建物や客室の年代を感じる点への言及もあるが、価格と眺望のバランスを評価する声が大勢を占める。山中・山代の工芸を歩いたあと、最終日に湖畔で景色を味わう構成に向く一軒と言える。
向く人 / 向かない人
-
向く:
湖や白山の眺望を重視する人、価格を抑えたい大人ふたり、能登牛・のどぐろなど地の食材を楽しみたい人 -
向かない:
最新設備や新築の客室を望む人、工芸工房への徒歩動線を宿に求める人(窯元・漆工房は山中・山代側に集中)
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約10分(送迎あり・要確認)
- 立地: 片山津温泉、柴山潟畔
- 眺望: 柴山潟・白山を望む客室、パノラマ露天風呂
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 創業: 1892年(明治25年)、創業130余年
5. たちばな四季亭 — 山代温泉
全館の床が天然無垢の桐——素足で歩く全20室。薬王院の庭を望む、山代「湯の曲輪」の宿。
20室、温泉旅館。
目安価格 ¥81,000–¥124,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
山代温泉の「湯の曲輪」に建ち、明治元年からの歴史をもつ宿である。第一の特徴は、全館の床に天然無垢の桐を敷き、素足で過ごせる設計——足裏の感触そのものが滞在の記憶になる。第二に、どの客室からも隣接する薬王院の日本庭園を望める眺望。第三に、古総湯・総湯へ徒歩圏という立地で、山代の九谷文化と共同浴場巡りの拠点として機能する点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、桐の床がもたらす足ざわりと館内の清潔感、庭の眺めへの評価が高い。源泉を使った温泉そのものへの満足度も厚い。客室の広さや設備は宿の歴史相応との受け止めもあるが、独自性のある空間体験を評価する声が中心である。山代の工芸動線に組み込みやすい中価格帯の一軒と言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
湯の曲輪の共同浴場巡りをしたい人、独自の空間体験を好む大人ふたり、庭の眺めを重視する人 -
向かない:
広い客室や最新設備を最優先する人、大規模大浴場を求める旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約10分(送迎あり・要確認)
- 立地: 山代温泉「湯の曲輪」、古総湯まで徒歩圏
- 客室: 全20室(露天風呂付き客室を含む)、全館桐の無垢床
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 歴史: 明治元年(1868年)からの歴史をもつ宿
6. かがり吉祥亭 — 山中温泉
名勝こおろぎ橋にほど近い全室リバービュー。鶴仙渓のせせらぎを聞く立ち湯露天が、山中らしさを凝縮する。
48室、温泉旅館。
目安価格 ¥50,000–¥71,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
山中温泉の渓谷美を代表する名勝・こおろぎ橋のほど近くに建ち、全室から鶴仙渓を望むリバービュー旅館である。第一の魅力は、渓流のせせらぎを間近に聞く立ち湯露天や貸切風呂の湯浴み体験。第二に、新鮮な海の幸と加賀野菜を取り合わせた食事。第三に、山中漆器の工房や「ゆげ街道」へのアクセスがよく、48室と一定の規模をもちながら工芸散策の拠点に使いやすい点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、鶴仙渓の眺めと露天風呂、川沿いの立地への評価が高い。中規模ゆえに館内の賑わいを感じる場面もあるが、設備の手入れと料理の満足度がそれを補っている。価格を抑えつつ山中らしい渓谷の景観を楽しみたい大人ふたりに向く一軒と言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
鶴仙渓・こおろぎ橋の散策を楽しみたい人、価格を抑えたい大人ふたり、川沿いの露天風呂を求める人 -
向かない:
ごく少人数の静けさを最優先する人、全室露天風呂や最上級の設えを求める旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約20分(バス・送迎あり・要確認)
- 立地: 山中温泉こおろぎ町、こおろぎ橋・鶴仙渓至近
- 客室: 全48室、全室リバービュー
- チェックイン: 14:00〜 / アウト 〜10:00
- 風呂: 鶴仙渓を望む立ち湯露天、貸切風呂あり
7. 花紫 — 山中温泉
鶴仙渓に臨む全27室。料理・工芸・茶を一つの滞在に編んだ、山中の「文化サロン」。
27室、温泉旅館。
目安価格 ¥121,000–¥225,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
鶴仙渓のほとりに建つ全27室の宿で、料理・工芸・茶・芸術を一つの滞在に織り込む「文化サロン」を標榜する。第一の魅力は、約50品から選べるアラカルト形式の加賀懐石という食の自由度。第二に、眺望のよいパノラマ露天風呂。第三に、山中漆器をはじめとする工芸を館内の設えに取り込み、ゆげ街道や鶴仙渓の散策と滞在が地続きになっている点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、選べる料理スタイルと館内の文化的な設え、スタッフの対応への評価が高い。価格帯は山中でも上位に位置するが、食事の自由度と滞在の密度がそれに見合うとする声が中心である。工芸と食を能動的に楽しみたい大人ふたりに向く一軒と言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
食事を自分で選びたい人、工芸・茶・芸術に関心のある大人ふたり、鶴仙渓の散策を楽しみたい人 -
向かない:
価格を抑えたい旅程、定番の会席を好む人、宿での体験よりも観光地巡りを優先する人
具体情報
- 最寄り駅: JR加賀温泉駅からタクシー約20分(バス・送迎あり・要確認)
- 立地: 山中温泉、鶴仙渓沿い・ゆげ街道へ徒歩圏
- 客室: 全27室
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 約50品から選べるアラカルト形式の加賀懐石
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 編集部が推すのは梅雨明け後の 7〜9 月。鶴仙渓の川床(かわどこ)が設えられ、片山津の柴山潟では夕景と花火が重なる時期である。新緑の濃い夏の渓谷美と、湯あがりに歩く工芸の街の涼が両立する。盛夏は日中の暑さがあるため、窯元・漆工房巡りは午前、湯と食は夕刻以降に振り分ける旅程が快適である。
Q. 予約のタイミングは?
A. 客室数の少ない老舗・デザイン旅館(あらや滔々庵・べにや無何有・胡蝶)は、週末や連休、お盆期間が早く埋まる。これらは 2〜3 か月前を目安に動きたい。中規模の宿は比較的直前でも空きが出やすいが、夏休み・お盆は通常期より目安価格が ¥10,000 前後上昇する傾向がある。平日泊は価格・予約のいずれも余裕が出やすい。
Q. 工芸の工房や窯元は実際に歩いて回れますか?
A. 山中温泉では「ゆげ街道」沿いに山中漆器の工房・ギャラリーが集まり、鶴仙渓の遊歩道とあわせて徒歩で巡れる。山代温泉は「湯の曲輪」を中心に九谷焼ゆかりの窯(須田菁華窯など)や魯山人寓居跡が点在し、共同浴場巡りと一体で歩ける。三湯間の移動は車・路線バスが基本となるため、エリアごとに一泊ずつ充てる構成が無理がない。
Q. アクセスは?
A. 東京からは北陸新幹線で加賀温泉駅まで約 2 時間 40 分(敦賀乗り換え)。大阪・名古屋からは特急で金沢・加賀温泉方面へアクセスできる。加賀温泉駅から各温泉地まではタクシーで約 10〜20 分。多くの宿が駅からの送迎を設けているため、予約時に確認したい。エリア内の周遊には観光周遊バス「CANBUS」も利用できる。
Q. インバウンド客の利用は?
A. 九谷焼・山中漆器・温泉という組み合わせは、工芸とウェルネスを目的とする訪日リピーター層との親和性が高い。山代・山中の老舗やデザイン旅館は器・建築・庭といった文化的要素を前面に出しており、英語での案内に対応する宿も増えている。北陸新幹線延伸で関東からの到達性が上がったことも、訪日客の滞在を後押ししている。
本記事の参考情報
・山代温泉観光協会 — 山代温泉・湯の曲輪の観光情報
・Wikipedia: 加賀温泉郷 — 加賀三湯の歴史・地理の背景
・Wikipedia: 九谷焼 — 五彩の絵付けと産地の背景
・Wikipedia: 山中漆器 — 轆轤挽き木地と漆器の歴史
編集部から
加賀三湯を一筆書きで巡る旅の核心は、温泉と工芸を別物としてではなく、一つの食卓の上で出会わせる点にある。山中漆器の塗りの椀に汁を張り、九谷の五彩の皿に向付を盛る——その器の組み合わせを、宿ごとの解釈で味わうのが本記事の選定軸である。価格を抑えるなら片山津・湖畔の景観泊を最終日に、静けさを極めるなら山代のデザイン旅館を一泊、と性格の異なる三湯を組み合わせると旅程に奥行きが出る。北陸新幹線の延伸で関東からの距離が縮まったいま、あなたなら工芸動線をどの順で歩くだろうか。次の夏旅の組み立てに、この 7 軒を起点にしてほしい。



